第90章 もう遅いと思わないか?

臨市の夜は相変わらず賑やかだった。窓一枚隔てて、西川安菜は外を行き交う人波をぼんやりと眺める。

伏せたまつげの下で、彼女は細かく計算していた。

たとえ有岡里穂が生きていたとしても、自分に辿り着けるとは限らない。あの晩、三兄弟の会話を盗み聞きした直後、情報は真っ先に消した。

それに、渡した情報は全部偽りだ。誰かが何かを話したとしても、まさか自分に疑いが向くはずがない――はず。

そう考えているうちに、車は病院の正面に滑り込んだ。

有岡健太がエンジンを切る。それでも両手はハンドルを握ったまま、硬い声で尋ねた。

「隼人兄さん……里穂、俺たちに会ってくれるかな」

「家族なら、誤解も言い争...

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